人づくり・組織づくりに
取り組み続けてきた企業で光る「デザインの力」
武州工業株式会社
西川 未沙さん(総務部)
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宮川 梨恵さん(総務人事 Manager)
「ものづくりで世の中の課題にチャレンジし続ける会社」をビジョンに掲げる武州工業。60年以上培ってきたパイプ加工を基幹技術として、玩具やインテリア、医療機器へと幅広く製品展開するほか、加工や品質管理のノウハウやシステムを他社に提供するなど、ものづくりの最前線を走り続けています。2019年に入社して4年目となる西川未沙さんは、現在総務部に在籍し、直属の上司である宮川梨恵さんとともに、会社全体の働く環境の整備や、社外に向けた広報活動に尽力しています。「お互い性格が似ている」と息もぴったりなお二人が、総務部から製造業を展望します。
課題にチャレンジし続ける、ものづくりへの思い
宮川 弊社は青梅市に拠点を置く製造業です。現在は、自動車、医療用手術具、半導体と、主に3つの分野でその部品となるものをつくっています。今後は環境やエネルギーの分野でも持てる力を発揮したいと、約150人の社員が一丸となって頑張っています。
西川 私は物心がついたときから、自分の手で何かをつくることがずっと好きでした。だから就職先に製造業を希望したのは、私の原点に立ち返ったような感じです。
宮川 西川さんと最初に出会ったのは、明星大学のキャンパスを会場として開かれた「学生×企業 ねっ多摩フェス」でしたね。
西川 はい。「ねっ多摩フェス」は地域にある企業と学生をマッチングする産官学共同のイベントです。私は3年生の秋ということもあって、ずっと興味があった製造業のブースを見てまわりました。そのときに武州工業を初めて知ったんです。
部品って完成品の一部になって、最終的には見えにくいものですが、武州工業はそこにさまざまな工夫をしているんですね。どんな小さな部品であっても、それができる過程は、まさに私の好きな「ものづくり」なんだな、という発見がありました。
宮川 私たちの大きな特徴のひとつが、製造に合わせ機器や設備から自社で設計、製作をする開発力です。製品の品質管理にも定評があり、近年ではAI、IoTなども駆使したものづくりのエキスパートとして、国内外の企業から相談や開発依頼も受けています。
西川 ものづくりを「つくりかた」から考えるスタンスが、とても魅力に感じました。それに武州工業には、ものづくりで世の中の課題にチャレンジするというビジョンがあります。私が明星デザインで学んできたものが、世の中を良くしようというソーシャルデザインの考え方だったので、武州工業のビジョンには深く共感できました。
宮川 その後、西川さんはインターンシップにも参加してくれました。そのときに「デザインの力で武州工業を良くしたい」とすごく熱意を持って話してくれたのを覚えています。
西川 大学では主にグラフィックを専攻していましたが、そこで身につけたスキルをこの会社で活かせるんじゃないか、と思いました。武州工業は社員みんなが創意工夫をする素敵な会社です。でもそれを発信する力がちょっと足りなくて、会社の魅力があまり知られていないのはもったいない。だから、「伝える」というところを強化したらもっと輝けるし、私はそこに貢献できるんじゃないかなって思ったんです。
明星デザインで学んだスキルを原動力にする
西川 入社後2年間は、製造の部署で現場の経験を積んで、それから希望していた総務部に配属になって、今、2年目になります。現在の仕事は主に人事と労務に関わるものです。
そうした通常の業務以外にも、社内環境の改善やイベントの企画・運営など、部署を越えたプロジェクトがいくつかあるので、そこにも積極的に参加しています。
宮川 西川さんの才能が発揮された一番のエピソードといえば、工場見学のプロジェクトですね。弊社では以前から、一般の方の工場見学を受け入れているのですが、初めて小学校の社会科見学の依頼があったときのことです。小学生にも製造業に興味を持ってもらえるような仕掛けを考えようと、各部署から集まった15人ほどでプロジェクトが立ち上がりました。そこで西川さんは、わかりやすいパンフレットをつくって配布したいと提案しました。
西川 プロジェクトのメンバーはいろんな部署から集まっていたので、それぞれがこれも入れよう、あれも入れたい、と要望がいっぱいあって、まとめるのに時間がかかってしまいました。でも、みんなの思いを背負っているんだと、かなり気合いを入れてつくりました。
宮川 みんなすごく喜んでたよ。西川さんはパンフレットを見る側の子どもの目線で考えるんですよね。そこが私たちと違うところ。自分で撮影してきた製造現場の写真も上手に使って、飽きさせない、楽しいパンフレットに仕上げてくれました。子どもたちからは「製造業ってかっこいい、楽しかった」という感想が聞けて、引率の先生にも「また来年も来たい」と言っていただけました。地域とともにあることを願ってきた企業として、子どもたちの未来もつくっていけるということは、本当に誇らしいですね。
人づくり、組織づくりの文化、風土で未来を拓く
宮川 西川さんは本当にエネルギッシュで、ひとつ覚えたことを、プラスアルファで3にも4にもして実現してくれる。たとえば、これまで育児休暇の申請受付は2か月ごとだったところを西川さんが1か月に改正しました。それによって毎月手当てが振り込まれるようになったので、子育て中の社員はとっても喜んでいました。
西川 それで私たち総務の手間が少しだけ増えるとしても、制度を利用する社員が嬉しい仕組みのほうがいいなって。私にとって、現状の問題点を見つけてより良くしようというのが、明星デザインで学んだ広い観点でのデザインですから。
宮川 武州工業自体、そういう会社だと思うんですよ。創業時から人づくり、組織づくりを大事にしてきた会社です。ただものをつくるのではなくて、そこで働く人、働く環境をより良くしようとみんなで考え動く、そういう文化、風土があります。そこに西川さんが大学で学んできたことと共通点があるのかもしれないですね。
西川 そうなんです。それが武州工業で働きたいな、と思った一番の理由です。武州工業には若手が何でも提案しやすい雰囲気がありますし、いったん意見が採用されると実現までがすごくスピーディです。そこは大手にはない中小企業ならではの良さで、私の働くモチベーションになっています。
宮川 西川さんの活躍もあって、来春、また明星デザインの卒業生が入社してくれることになりました。彼にはすでにインターンシップに参加してもらいましたが、西川さんと着眼点が似ていて、作業が面白く感じられる環境とか、事故が少なくなる仕組みなど、「デザインの力」を使って、わかりやすくて説得力のある提案をしてくれるんですよね。
西川 彼はプロダクトを中心に学んできているので、私の夢でもある、武州工業のオリジナル製品を生み出してくれるかも。一見、物静かだけど、何たって明星デザインの学生だから行動力はありますよ(笑)。武州工業のベテラン社員の技術力と彼の発想力が合わされば、よりクリエイティブなことができそうな予感がしてワクワクします。
宮川 武州工業ではオリジナルの知育玩具をつくっていたことがあって、西川さんはそれにとても興味をもってくれたものね。今は採算性の問題で生産中止になっていますが、新しい分野へ挑戦していきたいという思いが、今の社内にはあふれています。若い人たちには、時代の最先端のフレッシュな感性を存分に発揮してほしい。世の中の動きにしっかりと対応し、自ら変化していくことが、弊社のような中小の製造業を強くしていくのだと思います。
西川 これからは宇宙産業であったり、環境問題であったり、ものづくりが活躍する場には無限の可能性があると思います。私はそれをバックアップする総務として、SNSなども駆使して、発信力を高めることに取り組んでいきます。
宮川 これまで弊社には広報部門がありませんでしたが、西川さんが加わったことで、総務部が中心となって、一貫した広報活動が展開できそうですね。
一方で、私は今、これから定年を迎える方たちが、武州工業で働き続けて良かったな、と思える組織作りに取り組み始めたところです。弊社ならではの人づくり、組織づくりでも、まだまだできることがあるので、西川さんの力を貸してくださいね。
西川 私にとって宮川さんは本当に理想の上司で、今はまだ追いかけるだけで精一杯ですが、これからも2人で、もっともっと武州工業を、そして日本のものづくりを盛り上げるために、頑張ります。