地元に根差して人の一生に寄り添う仕事
就職するのは、貸衣装業から写真撮影業を展開している会社です。配属はフォト事業部で、スタジオでの勤務になります。その会社は、地元に根付いた会社で、お客様との関係が一度きりで終わらない。七五三の写真を撮った子が成長して成人式の写真を撮って、それからブライダル、子どもが生まれればお宮参り、そしてまたその子たちを撮影していけたらいいよね、っていう会社で、それって素敵だな、と思いました。
技術的なことは、まずコーディネートの補佐をやって、それから1年かけて撮影の勉強をします。
どんな写真に仕上げるかは、子どものころ、あんな写真を撮ったから同じシチュエーションで撮りたいよね、とか、お客様とお話をして、最終的にはフォトグラファーの自由に任されます。限られた打ち合わせの時間の中で、相手が望んでいることを聞き出すコミュニケーションやリサーチの能力も必要ですし、撮影では、じゃあどんな背景にして何を置こうとか、インテリアの知識だったり、明星デザインで学んだスキルを生かせることがいっぱいあると思っていて、今からとても楽しみです。
会話が上手になるのも、基礎の基礎から
私は工芸高校のインテリア科を卒業していて、将来はものづくりに携わりたいとは思っていたんですが、何かひとつのジャンルではなくて、いろんなデザインに触れてみたいな、と思って、6つのコースが自由に選べる明星デザインに入学しました。明星デザインって、入学してから、こんなつもりじゃなかったって思う人も多いはず。デザインっていうと、ものづくりのイメージが強いけれど、最初からパソコンに向かって文章を考えたりする授業があって、苦手に感じる人も多いと思うんです。
私も文章を書くのがすごく苦手で。でもその基礎をしっかり積んだから、会話の能力も上がったんだろうと思います。まず文章が組み立てられないと、会話でもうまく伝わらない。これから社会に出ていくうえできっと重要になるのは、コミュニケーションやプレゼンテーションの力になってくると思います。そこを発揮するには、文章を書くという基礎は重要だと実感しています。
誰かのためを思う表現をしたい
明星デザインの授業で印象に残っているのは、「企画表現5(統合)」ですね。市などの自治体から依頼された問題にグループで取り組む授業で、私の学年は、「八王子の日本遺産をみんなに知ってもらうための施策を考える」というテーマでした。5、6人のグループワークで、私たちは電車を利用した広告を提案しました。市役所の方を招いてのプレゼンテーションも好評で、電車全体の広告は難しいけれど、QRコードを利用した提案は実際に活用したい、ということになって、半年間、グループのみんなでプロジェクトを運用しました。社会で実用化するには、より細かいところまで突き詰めなければならない実感も得られて、貴重な体験ができました。
そのころから、私には企画が向いているなって思いました。企画では、与えられたテーマに対して、どんな問題が隠れているのか、依頼した側は何を求めているのか、それに対してどんな解決策があるか、どんな方法で表したらまわりに伝わりやすいか、そういうことを考えます。
それは写真も同じです。自分のための表現ではなく、誰かのためを考える。それがこれから、プロのフォトグラファーとしての私のモチベーションになっていくと思います。